知られざる日本版引き寄せの法則の大家、中村天風氏の「運命を拓く」が素晴らしい。

　近年自己啓発本の分野などで「引き寄せの法則」というものが注目されています。しかし、日本には戦前の大正時代にこの思想と全く同じものを主張し、東郷平八郎や原敬、松下幸之助や稲盛和夫など、日本の歴史を形作ったそうそうたる面々に影響を与えた中村天風という方が存在するのです。
　天風氏の本はどれも分厚く、また入手も困難なのですが、この本は比較的読みやすく、比較的どこでも容易に入手することができます。
　海外の引き寄せの法則系の本の場合、その根本にはキリスト教的な考え方があり、日本人の感覚には馴染みづらい部分があります。しかし、天風氏の場合根本にあるのはインド思想であり、仏教に馴染んだ日本人には比較的親しみやすいと言う利点があります。
　そして何より魅力的なのは氏のその語り口。戦前の文筆家によくあるように、その言葉はとても軽妙で面白おかしく、まるで落語や講談でも聞いているかのようにサクサクとページが進んでいきます。
　この手の内容には胡散臭いと感じてしまう人も少なくはないでしょう。しかし、やはりこれだけ長い間多くの人々に支持されているということは、一定の真実も含んでいると見ることもできると思います。
　本当に心の中に描いた物事が実現するかはともかく、自分自身を整えて、日々よい心がけで生きていくということは、万人におすすめできる基本的な生活態度だと思っています。