簡単な計画が何人もの人生を狂わせていく小説「シンプル・プラン」に飲み込まれた

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シンプル・プラン | スコット・スミス


27歳 | 女性 | 会社員 | 半田ふみ

この小説を読んだあと、私は衝撃のあまりしばらく放心してしまいました。
こんな風に、小説の内容に飲み込まれるような体験は本当に久しぶりです。感動、というよりも圧倒されました。
主人公は、会計士として働くごく普通の男性。近々出産を控えた妻がおり、贅沢をできるほどではないものの、あるもので満足できる余裕のある心と生活を持っていました。
ところがある日、親の墓参りに行く道中、彼は墜落した飛行機を発見します。その中にあったのは死体と、見たこともないような大金。
墓参りに同行していた兄とその親友は、金を自分たちで山分けしようと主張します。最初は嫌がった主人公でしたが、やがて納得し、その金を山分けするためのごく簡単な計画(=シンプル・プラン)を立てます。しかし、それが彼らの悲劇の始まりだったのです。
最初に衝撃を受けたのは、読んでいる感じ「善良な一般市民」かつ「巻き込まれ型」だと思っていた主人公が、かなり序盤で能動的に犯罪に手を染め始める点です。なにしろ彼は、シンプル・プランを立てた張本人ですらあるのですから。
その後も彼は、兄を助けるため、兄の親友からの強請りに抵抗するため、そして自分たちの身を守るために、何度となく重い罪を犯していきます。
その転落っぷりは想像以上に激しく、私も一緒に転がり落ちるような感覚に恐怖しながら読み進めました。