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告白 | 湊かなえ
33歳 | 女性 | 主婦 | Erise
シングルマザーの中学教師が、一人っ子の愛娘を、職場である中学校のプールで亡くしてしまう。事故で済まされた我が子の死因に納得できず、母親は衝撃の真実にたどり着く。
母親としての犯人への憎悪、元夫との関係、真犯人の行方など、様々な要素が絡み、それぞれの登場人物の視点から、痛ましい事件が切り取られ、次第に真相が明るみになってゆく。
読者として推理した新犯人像はことごとく裏切られてゆき、思春期の揺れ動く心の投影が各人物で絶妙に異なっており、明るみに出る真実、人物像共に当初の見立てとはまるで変ってくることに気づく。本当の悪人は果たして誰なのか、読み進める中で、読者自身が、見当違いの疑惑を掻き立ててしまうほどに熱中できる。愛娘の殺害という、痛ましい事件への復讐という、本筋の他に、学校教育の盲点、家庭教育の問題、当時社会問題として注目を浴びていたHIVの問題等様々なジャンルを風刺しつつ、社会の闇をそれぞれの人物に投影して、読者に語り掛けてくる。
一読してサイコパスな少年の生い立ちやその少年自身の夢想していた母親像との乖離。少年法に守られた加害者を被害者自らが裁くという斬新な発想。果たした誰が救われたのか。
読了後の読者に対していつまでも思考の反芻をさせ、再びページをめくらせてしまう深みのある素晴らしい作品です。