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この作品は、いわゆる土俗(その土地ならではの風習)をテーマにしたホラー小説です。
私は昔から、そういった独特の風習やわらべ唄なんかがベースになった、日本の古風な怪談話が好きなのですが、この作品はそれに加えて現代的な要素も盛り込まれていて、それゆえに読みやすく、個人的には「最高!」とテンションが上がるような作品でした。
この作品のヒロインの出身地である村では「生まれ変わり」が信じられており、それを実現させるためにある異様な儀式が今でも続いていました。
ヒロインの夫=主人公は、その村で信じられている神や生まれ変わりといったことは当然信じられませんでしたが、どうやらヒロインもまた信者であることを知り驚きます。しかし、信じているうえで「村には帰りたくない」というのです。
ところが、ヒロインは出産のために、やむなく帰郷。そして生まれた子供は、なんとその村で信仰されている神の生まれ変わりだとされ、ヒロインとともに囚われてしまうのです。
妻と子供を取り戻すため、主人公は奔走するのですが…というのが、この作品の大まかなストーリー。
「神」や「生まれ変わり」といったものを、私自身は信じていないのですが、いざ村全体で信仰されているものとして突きつけられると圧倒されてしまいます。そして(他人事だからこそ)ゾワゾワ、ワクワクしてしまいます。
また、この作品にはミステリー的な要素もあります。ミステリーを読み慣れている人から見れば、やや拾いやすい伏線が多いですが、逆に言うとそれだけ丁寧に作られた作品ともいえます。
とにかく、あらゆる面で面白くて、最後まで一気読みしてしまいました。