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新版 日本人になった祖先たち DNAが解明する多元的構造 | 篠田謙一
59歳 | 男性 | 自営業 | シャルトリュー
オーダーメイドの遺伝子治療や犯罪調査、あるいは新型コロナウイルスのPCR検査など、最近のDNA検査技術の発達がすごく進歩していることは、なんとなくニュースで見聞きしていました。しかし、人類史の分野でもこれほど画期的な成果が得られつつあることに驚きでした。
本書の前半で、近年の遺伝子解析による人類史の知見の解説があり、ミトコンドリアDNAとハブログループというちょっと難しい話がありますが、今日残っている様々な人種のつながりを文化・文明ではなく、遺伝子によって整理。後半は、日本人の起源という面にフォーカスして最新の研究成果を解説してくれています。これによると、日本人は縄文系の遺伝子の上に年月をかけて弥生系の遺伝子が西から混血していったイメージ。混血度合いも時代と地域でグラデーション。北海道と沖縄には本土とは更に異なる遺伝子分布があるらしい。
じゃあ、例えば「古事記」や「日本書記」が伝えている日本の成り立ちの話は、どのようにして出来上がったのか。先にいた縄文人はどうなってしまったのか。あるいは、最近日本の人口減少で外国人労働者も普通にたくさん見かけるようになって、もっと多様な遺伝子が混ざっていくと、日本人って何だと言えるのか、これまで当然と思っていた文化や伝統も消滅するのか等々、あれこれイメージが広がります。
大昔、学校の歴史の授業で日本は最初に狩猟中心の縄文時代があって、次に稲作中心の弥生文化が始まって、卑弥呼から大和朝廷へと日本の礎が築かれたと習ってきた。そんな単純な一つの流れで日本人が成り立っていなかったことを教えてくれた一冊です。