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現実とファンタジーの狭間に連れて行ってくれる小説、「無花果とムーン」です。

おすすめする本

無花果とムーン | 桜庭一樹


30歳 | 女性 | 主婦 | もぐらシャーベット

桜庭一樹さんの描く世界観は、現実感とファンタジーの境目がとても自然で、曖昧です。どこか非日常なのに、確かにそこにあると思わせてくれる、不思議な魅力に引き込まれます。「無花果とムーン」では、語り手である「あたし」こと月夜と、そのお兄ちゃんである奈落が、現実とファンタジーの狭間で短くて長い夏を送る様子が描かれています。自転車で出かけたり、アイスを食べたり、バイトをしたり……。そんな誰にでも起こる夏の出来事が、この本を通すと切なくも尊い大切な夏の一コマに見えてきます。月夜と一緒に悩んだり、成長したり。
読み終えたとき、私の心に残ったのは、清涼感と少しの寂しさと希望、そして次のような自分への問いかけでした。自分が他人を見るとき、なにをもってその人本人だと判断しているんだろう?見た目か、言動か、性格か。自分の知らない一面を見たとき、それもその人の一部だと受け止められるだろうか。
月夜を通して、自分の人との関わり方、捉え方も考え直すことができました。悲しくも優しいファンタジーを読みたい方、夏のきらめきを感じたい方、本当の友人ってどんな存在だろうとお思いの方にお勧めです。あなたも桜庭ワールドに飛び込んでみませんか。