「博士の愛した数式」は、博士と家政婦と息子との心温まる日常が感動します

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博士の愛した数式 | 小川洋子


62歳 | 男性 | 会社員 | papizou

第一回本屋大賞を受賞した当時に読みましたが、記憶が80分しか持たない博士の奇妙な生活が記憶に残っていました。先日久しぶりに読み返したところ、素数や完全数、約数が数学の本と間違えるほど記載されていたのに驚きました。
さらに阪神タイガースの江夏の活躍を博士が喜ぶシーンもあり、決して堅物ではない普通の趣味を持つ男性なんだなと思い返しました。この本の主人公は記憶障害をもつ博士ですが、博士の身の回りを世話する家政婦さんのやさしさが素晴らしいです。若い時にシングルマザーになり、10歳の息子を博士のところに連れていきます。息子も変人といえる博士に対し、尊敬の念をもって接するところは心が温まります。博士もどんどん心を通わせ、限られた記憶の中でも、親子との日常を作り上げていきます。
野球場や床屋、歯医者に行かせるときに苦労しますが、それまで外出していなかった博士を連れ出したことにより、人間らしい生活になじませる努力も家政婦としての行動ではなく、博士に対する尊敬と愛情からだと思います。
息子が11歳になるときの誕生日パーティはケーキが欠け、テーブルクロスも汚れる散々なものになりましたが、心温まるシーンです。
この日を境に博士の記憶力が衰えてしまい、家政婦さんと息子との思い出もなくなってしまいました。博士が専門の施設に入つてからも親子の友情は彼が亡くなるまで続きます。最後は息子が中学校の数学の先生になり、博士が息子を抱き寄せるところでは涙があふれてしまいました。