「僕と王様」という優しさとそれだけでは生きていかれない世知辛い世界。

おすすめする本

僕と王様 | にしかわたく


28歳 | 男性 | パート・アルバイト | さっピー

僕と王様という漫画は王様と召使いの僕が不思議な旅をする表題作のシリーズを含めた短編集です。
どの物語もその可愛らしい絵のタッチとは裏腹に胸が締め付けられる切なさと世の中の不条理さそして最後には希望が垣間見えるものばかりです。
ペロン粉末という話です。これは著者にしかわたく氏のデビュー作だそうです。
そのストーリーは身寄りのない孤児が集められて親方という人物から万病に効くというペロン粉末を街で売りさばくというものです。その絵柄からは独特のペーソスがあふれています。人間が何が本当に大切か、本物とは何かといったメッセージが込められています。そして優しさにあふれているがどこか物悲しい雰囲気と最後には救いがあるような展開で読み終わった後になんだか不思議な、切なく悲しいけど温かい気持ちになれます。
あとは作者の実体験が元になっているというイレブン・イヤーズ・オールドという作品では小学生高学年の子供が主人公でその頃ならではの独特の閉塞感がある物語です。火遊びや万引きなどの非行とされる行為を友人達とするのではなく、一人で行き場のない焦燥感、孤独感を埋めるように繰り返す主人公とクラスで容姿をからかわれている女子生徒との交流の物語です。
この話も常に物悲しい雰囲気が漂う中にも最後は光が見え出す展開でとてもグッときました。