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ウェルカム・ホーム!鷺沢萌さんの遺作です。心温まる作品です。

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ウェルカム・ホーム! | 鷺沢萌


42歳 | 女性 | パート・アルバイト | もも

故人鷺沢萌さんの遺作です。ウェルカム・ホーム!は晩年の作品になります。作品は二つの物語で構成されており、渡辺毅のウェルカム・ホームと小島律子のウェルカム・ホームです。両作品とも、時代背景はバブルの頃で、血の繋がらない家族の絆を描いています。ウェルカム・ホームとは「おかえり」という意味です。おかえり!と暖かく迎えてくれる人が家族であり、そして帰る場所なのだと語っています。渡辺毅のウェルカム・ホームでは妻を亡くした友人の英弘と息子の憲弘と共に暮らす事になった毅の物語、小島律子のウェルカム・ホームではニ度目の結婚で相手の連れ子の聖奈と共に暮らす事になった律子の物語です。毅、律子、共に共通しているのが、心に何かぽっかり穴が空いてる事で、それゆえ毅は全てにおいてテキトーで生きてきており、律子は仕事に熱中する事で紛らわし、そんな二人が血の繋がらない子を育てる事になり、初めて生きる意味を見出し、自分自身を成長させていきます。終わり部分に「形ある何かを得る」という言葉がありますが、それはおかえり!という言葉そのものではないでしょうか。
人が求めて止まないものはそんなあたたかさなのだと思います。鷺沢さんの伝えたかった想いも、求めていた事もそんな温もりなのでしょう。また物語の背景であるバブルの頃の描写が面白いです。バブルを知らない世代にはその頃の世の中や人々の心情がどのようなものであったか垣間見る事が出来ます。