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チロヌップのきつね | 高橋宏幸
45歳 | 女性 | 自営業 | ゆう
読み進めれば読み進めるほど、きつねの家族の愛情と、人間の非道で愚かな行動がわかってきます。
最初の頃の、老夫婦と一緒に過ごしていた子ぎつねの、愛らしい姿が、可愛らしく見えれば見えるほど、この後の展開に胸が痛みます。
銃を持った人間によって、子ぎつねの父親と兄は殺され、子ぎつねも罠にかかってしまいました。
その子ぎつねに、怪我をしながらも食べ物を運ぶ母ぎつね。
子ぎつねは、人間を憎みながらこの世を去ってしまったのでしょうか。
それとも、いつか訪れるおじいさんとおばあさんを待っていたのでしょうか。
その答えは、ラストのシーンに表れていたのかもしれません。
一面に咲いていたきつねざくらの花。あの花は、子ぎつねが老夫婦に残してくれた贈り物のように思えました。
最後の最後まで、老夫婦との日々を懐かしんでいたかのように感じました。
人間の非道さを、責めるのではなく、ただ静かに淡々と描かれていて、だからこそ余計に悲劇性を感じます。
ときには、命の大切さをこうした形で知るのもいいのではないでしょうか。
大人にこそ、この絵本はぜひとも読んで欲しいと思います。
読み終わっても、ずっと涙が止まらず、ただただ切なくて仕方がありませんでした。