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津軽双花 | 葉室麟
32歳 | 女性 | 自営業 | かりん
2017年に亡くなった葉室麟の女性を主人公にした作品です。関ケ原の戦で勝利した徳川家康の養女・満天姫と、敗者石田三成の娘・辰姫が共に津軽家に嫁ぎ、正室と側室という立場で一人の男の愛情を奪い合う…という、あらすじを見ただけでハラハラしてしまう小説です。
正直、嫉妬でドロドロの醜い女の争いを予想(期待?)して読みましたが、そんな浅はかな考えだったことを申し訳なく思うくらい、女同士のカッコイイ戦いを描いた作品でした。満天姫も辰姫もどちらも強い信念があり、プライドがあり、非常に聡明な女性たちです。相手に対する嫉妬も対抗心も持ちながら、絶対にそれに屈せず、誹謗するような醜い姿をさらしません。逆に相手を好敵手と認め、敬う潔さがあります。私自身は正室として生きた満天姫の華やかな美しさと戦国武将さながらの豪胆さに憧れますが、読む人によってどちらの女性を推すかがはっきり分かれるでしょう。なんにせよ、自分の生き方に対する確かな自信があれば、つまらない嫉妬に身を焦がすようなことはせずに済むのだろうと思います。
本書には表題作のほかに大坂の陣を描いた「鳳凰記」も収録されています。「鳳凰記」もまた豊臣秀吉の妻、茶々と寧々の女の覚悟を描いた作品です。互いに一人の男を巡って相対する存在でありながら、秀吉の思いを継ぐという志は同じであり、こちらもそれぞれの生き様に胸が熱くなりました。