あまたある異世界転生話の中でも異色な「自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。」

乙女ゲームの世界に転生してしまえば、悪役令嬢でしたという作品は多々ありますが。その多くは、悪役令嬢ゆえのバッドエンドを回避するために奮闘するものです。しかし、この作品「自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。」は全く違います。主人公は、自分はゲームの世界の悪役令嬢だという女の子の婚約者である王子様。そう、転生した少女が主人公ではなく、そんな妄想を話す少女が婚約者となってしまった男の子の話です。
正直、この世界は前世の自分がやっていたゲームの世界だだの、自分は悪役令嬢で婚約破棄されるのだの妄想爆発な相手など、ドン引きして遠のくものです。幼子には荷が重いというもの。
けれど、この王子様は、超優秀で何でもできてしまい、世の中つまらないと感じていたので、突拍子もない少女を気に入ってしまいます。最初は、頭のおかしさを。そのうち、その暴走具合を。どこまでも、珍獣を見るかのような目線で。
しかし、王子様の評価はともかく、さすがに乙女ゲームの悪役令嬢になれるくらいなので少女には美貌が備わっており、それに加えて、ゲームのシナリオ通りこなそうと必死な姿は、どこまでも素直でピュアな可愛さがあり、周囲の面々は彼女の魅力に気付き人が集まり始めます。
そうなると、自分のおもちゃであった婚約者のモテ具合が面白くなく、まさかの嫉妬なんてものをしてしまった王子様。婚約者の妄想など半分も信じていなかったのに、暇つぶしでしかなかったのに、逆にそれを逆手に取ってあれこれまるめにかかろうとさえします。
少しずつ少女にハマっていく自分を自覚していく王子の姿は、真面目な当人には悪いですが、最高に面白くてニマニマしてしまいます。
異世界転生で振り回されるのは転生した本人ばかりではないのだと、この手のファンタジーの面白さに深みさえ与えてくれる作品です。
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