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しろいろの街の、その骨の体温の(朝日文庫) | 村田 沙耶香
51歳 | 男性 | 自営業 | 文庫本オタク
数々の賞を受賞している村田さんの作品は、リアリティと不思議な世界感で読み手を退屈させません。
今回読んだ作品は、ニュータウンで生活をする小学生が中学3年を迎える前までの
様々な出来事に対する人間模様を描いた内容です。
刻一刻と街並みを変えていく中で小学生の女の子達は、
日々不満を抱きながら何とか溶け込もうと我を抑えているばかり。
それが自分にとって居心地が良く、うまく溶け込めていると思っていたら
ある日同じクラスの男の子と習字教室がきっかけでぎこちない会話が始まっていきます。
自分よりも背が低く痩せている男の子は同級生と言うよりは年下の子供。
ひょんな事でよく分からないままその子とキスをしてしまいます。
このときに自分のオモチャにしたいと思ってから、その子に対する見方や扱い方がエスカレートしていきます。
小学校を卒業するまでは、仲良しの女の子ともそれ以外の子たちともこれと言ったトラブルもなかったのですが、
中学に入学してから女子生徒にしかわからないグループ分けが存在し始め、
上のグループは華やかな存在で権力もあり、下のグループになるほどいじめの対象にもなりやすくなります。
母親に「今の年頃の女の子は、自分が世界一美人か醜いかのどちらかだと思ってる、気にしちゃダメだよ」
そう言われても学校へ行けば嫌でもそれを意識せざるを得ないし、些細なことでいじめやシカトで嫌な思いをする。
悶々としている主人公の捌け口は、オモチャ扱いの男の子への性的行為へと向かっていきます。
小学生の頃にショチョウとセイツウを見せ合う口約束を思い出してその子の家に行き、
「私はあなたにショチョウを目の前で見せたけど、あなたのセイツウは見ていない」
そう言ってその子が抵抗しても止めることなく、口淫でセイツウを目の当たりにします。
その子は学校では一切口に出すことはありませんでしたが、
「ああいうことはお互い好きになってからするものじゃないかと思う」
「私はオモチャとしてのあなたが欲しいだけ」
「じゃあ嫌いだな」
気がつけば中2の3学期になっても自分の存在が見い出せず、嫌われて孤立するばかり。
自分の存在とその子に対する気持ちをはっきりさせるために、
初めて会った場所でもう1度会って話をしていると、
自分の家と全く同じ造りのその子の家に一緒に向かって、お互い好きであることを理解して結ばれます。
読了後、“確かにグループ分けとか、この生徒に逆らってはいけない”というのがあったことを思い出していました。
自分がその時どんな振る舞いをしていたのかとか、どんな存在だったのかとか
何十年も前のことが頭の中をしばらくよぎっていました。