「夏目アラタ」の結婚を推します。スリリングな駆け引きから目が離せません。

次にくるマンガ大賞 2020年度のU-NEXT賞に輝いた「夏目アラタ」の結婚を読みました。
エキセントリックな美少女殺人鬼と児童相談所のちょい悪色男の獄中結婚がテーマですが、人間の心理に迫る駆け引きと二転三転する展開が面白すぎて目が離せません。
主人公の夏目アラタはぱっと見やさぐれていますが子供への虐待が許せない正義漢で、ヒロインの真珠はサイコパスながらコケティッシュな言動が魅力的です。
この2人がアクリルの仕切りを隔て面会するごと、互いの裏をかきあって相手の本音を引き出そうとするのですが、その描写が非常にスリリングで手に汗握りました。
最初は真珠を警戒していながら、彼女の孤独さや弱さに徐徐に惹かれていくアラタの墓穴にはまっていく感じがとてもイイですし、たとえ相手が殺人鬼でも本筋と関係ない弱みは抉らない、アラタの人としての誠実さに惹かれていく真珠の姿もキュンとします。
他の登場人物も一癖二癖あり、彼らがこの先どうストーリーに絡んでくるのかハラハラドキドキします。
偽物の恋がはたして成就するのか否か、結婚が叶ったとしてそれがゴールなのかも謎ですし、真珠が冤罪に苦しむ悲劇のヒロインなのか、アラタを利用して罪を逃れようとする極悪非道の殺人鬼なのか、二面性を孕む真珠の妖しい魅力と相俟ってリーダビリティが高い傑作に仕上がっています。
上質のサスペンスが読みたければ手にとって損はありません。