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アリス殺し | 小林泰三
27歳 | 女性 | 会社員 | 半田ふみ
この小説はミステリー作品ですが、「夢と現実がリンクしている」という不思議なテーマを持っています。「これはミステリー小説なのか?」と、私もはじめは半信半疑で読んでいましたが、読み切る頃にはこのミステリーの巧みさ・面白さに圧倒されていました。
ヒロイン・栗栖川亜理はある日、自分が毎日同じ夢を(それも時系列がきちんとつながった夢を)見ていることに気が付きます。そしてハンプティ・ダンプティが墜落死する夢を見た翌日、自分が通う大学でも、「玉子」というあだ名の研究員が墜落死していました。その後も繰り返される、夢と現実とで共通点を持った事件。そして夢の中の「アリス」は、その最重要容疑者にされてしまうのです。
亜理は協力者を得て容疑を晴らそうと奔走するのですが、なにしろ不思議の国をテーマにした夢の国には、常識も整合性もあったものではない。このもどかしさが、読む方にとっては時にもどかしく、時に面白くも移ります。
そして最後を読んだとき…私は世界をひっくり返されるような衝撃を与えられました。
すべての真相が明かされたとき、無意識に頭に引っかかっていた伏線が、ブワッと頭の中に蘇るような快感!
できるなら、記憶を消してもう一度最初から読んでみたい作品のひとつです。