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母 | 三浦綾子
33歳 | 女性 | 主婦 | manekineko
一体、何が正しくて、何が悪いのか、この作品を読むと分からなくなってしまいます。
ただ分かることは、小林多喜二の母はどんなことがあっても多喜二を愛し、温かく見守ってくれる存在なのだということです。
物語は、多喜二の母・セキの幼少期からスタートします。
誰かに語り掛けるかのような口調で進んでいきます。
セキの幼少期は厳しいものでしたが、穏やかに過ぎ去っていたのだと思います。
見合いで出会った夫は病弱でしたが、とも仲睦まじく暮らして、その後子どもを儲けます。
親類が北海道・小樽にいたことから、小樽へ引越すのですが、この前後から少し彼女の人生は変わっていったのかもしれません。
もしも、生まれ育った土地でずっと暮らしていたら、どんな人生が待っていたのだろうかな…と感じてしまいます。
見知らぬ土地でたくさんの子供たちと病弱な夫と共に生活をすると言っても、なかなか難しいものがあったと思います。
親類の手を借りてなんとか生活をできるようになり、成長した多喜二も家のために働いてくれます。
小林多喜二が蟹工船を書いた理由は、彼の家の事情もあったのかもしれませんが、小樽で見た様々な光景から影響されたのかなと思ってしまいます。
母・セキにとっては、多喜二は家のために、兄弟のために、そして自分のためを考えて行動する思いやりのある子。
彼がやりたいと思うことは応援し、信じるものは信じたいと思っていたと思います。
そのことが伝わるたびに、多喜二の死はどんなに心を痛める事件だったのだろうかと胸が締め付けられると同時に、自分の両親も私が思う道をこんなふうに一心に信じて応援してくれているのかなと感じます。
それに応えられているのだろうか、と考えさせられてしまいます。
多喜二の描いた作品は当時、大きな影響を与えましたが、それが悪いことだったのか、良いことだったのか、この物語を読むと分からなくなってしまいます。
氷点と同じように、考えさせられる物語でした。