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フルーツバスケット | 高屋奈月
39歳 | 女性 | パート・アルバイト | Ns
再アニメ化されたと聞き、子供のころ原作漫画を読んだことがあったなと記憶をたどってみたのですが、なんとなくのストーリーは覚えてはいても、最終巻まで読んだのか途中までしか読んでいないのか思い出せませんでした。正直、面白かったという覚えもない作品でしたが、機会があり全巻一気に読んでみました。
母親を亡くしホームレスとなった主人公の少女が出会ったのは、十二支のモノノケの呪いにより、異性に抱きつかれると獣に変身してしまう草摩家の面々。動物好きの少女はその不可思議さをすんなり受け入れてしまいますが、実際には当人にもその周囲にも不幸を呼び寄せることの方が大きい呪いでしかなく、物語が進むにつれてどんどん過酷な運命に翻弄されるモノノケ憑きたちの苦悩が浮き彫りになってきます。
そんな中で、ひた向きにまっすぐと奮闘する主人公の姿は、ある者にとっては希望であり、ある者にとっては忌み嫌うものでしかなく、正直、少女漫画であり、多くが十代に少年少女の様子が描かれているからこそのピュアストーリーになっていますが、実質としては結構ドロドロ。読み手にも、主人公の少女の異質さが、良くも悪くも目立ちます。
今にして思えば、子供の頃はそれゆえに、あまり響かない作品となってしまったのでしょう。
しかし、大人だった登場人物たちが、今はもう年下も年下なアラフォーになって読み返せば、主人公の場違いな発言や、表面しかなぞっていないような理想、偏った愛情なども、すべてその年代の女の子の等身大だと思え好感が持てます。作中では描き切れていない空白部分を、経験や知識などで想像し保管できるようになった今では、主人公だけでもなくどの面々も、その年頃らしい姿に愛おしさが募ります。
名作といわれるのが読み返してようやくわかりました。
愚かさや、残酷ささえも、どうしてこんなに優しく切なく、愛しく思えるのか。心に響く作品です。